死霊列車(弱ネタバレ有)
2009/08/18 01:07:17

東京と出雲市で発生したダーズ(致死的急性狂犬病症候群)が感染爆発、死者1800万人と推定され、政府の主要機関が札幌に移された。ダーズは人を咬むことによって鼠算式に患者を増殖させ、発病後の死亡率は限りなく100%に近い。国民はこのまま滅びてしまうのか。空路が絶たれ、青函トンネル閉鎖の時刻も刻々と迫る中、家族を失った15歳の鉄道少年、翔太はトロッコ列車「おろち号」を運転し北を目指す。タイムリミットホラー。
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という北上秋彦による「『和風』28日後…」物語です。女性が9日間世の中から引きこもってたら気付いたら周りは死体とゾンビだらけっていうオープニングからしてもろに「28日後…」です。なんせ「R(レイビーズ)ウイルス」もしくは、「R(レイジ)ウイルス」なんていうそのまますぎるオマージュも飛び出しますから。
しかしその終末思想はもろにA.ロメロから影響を受けてますね。「新たな敵」っていうタイトルからまさかな、まさかそんなそのままなわけないよな、と思ったらそのまさかでその「新たな敵」ってのが思いっきり秩序の崩壊で暴徒化した人間=「ゾンビ狩猟団」でしたからね。なんという「ドーン・オヴ・ザ・デッド」
という風に悉くゾンビ物の王道をぶっ飛ばす、何も考えてない極上のどあほうスプラッターです。一応ゾンビ物が大好きで結構数多くの作品を見てきちゃった自分から言わせてもらうとですね、この後多分こうなるんだろうなあっていう展開はおろかオチも誰が生き残るのかも、こういうのが好きな人間からするとまず間違いなく分かります。自衛隊が保護する、アルミケースを抱えた謎の女性っていうこれまたゾンビ作品だと不可欠な要素まで登場して、でもその正体も完全に予想の範疇です。しかしこいつ関連の種明かしはびっくりするほど盛り上がりません。尻すぼみもいいところです。
…という風にのっけから批判ばっかりですが、では全く楽しくなかったのかというとそんなこともなくて、斬新だなと思える点も少しありました。まず、「鉄道」+「ゾンビ」っていう組み合わせが非常に面白いです。生き残った人たちが北海道にたくさんいるって事で北海道をひたすら向かうんですが、青函トンネルはあと何時間でしまってしまう、っていういわゆる「タイムリミットに向けて爆走する」ってのは籠城することが多いゾンビ物の中では結構斬新な感覚でした。
そして一駅一駅ごとの見せ方も結構見事でした。ある駅は見渡す限りのゾンビの巣と化しており、ある駅は逆に物音一つない静けさに包まれており、そしてある駅は…といった様に。特にこの物語のクライマックスでもある、ゾンビの大軍に囲まれながら壊れた鉄橋を直す場面はなかなかのド迫力です。
既存のゾンビ作品へのオマージュに満ち溢れ、もはや食傷気味とも言える様な展開も多いですが、しかし一方で日本ならではの設定を盛り込んで極上のエンターテインメントに仕上げたいという意欲も物凄く感じられる作品でした。日本は「火葬」が一般的だからかあまり「ゾンビ作品」ってのが登場しないですが、こういう作品がどんどん登場してほしいなあとか思いました。
しかしBrutal Truthの1stとThe Crownの4thを聴きながら読んでたんですが、この疾走感が本当びっくりするほどぴったりでなんかベッドの上でのたうちまわりたくなりますね。Walking Corpseとかどんな歌詞なんだろうなあって読んでみて衝撃をうけたのは俺だけではないはず。
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クライマックスに相応しい一曲:Rebel Angel/The Crown
そして哀愁漂う場面ではDeadman's songを聴こう。
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