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MW/手塚治虫(漫)

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銀行員として働く結城三知夫(ゆうきみちお)には、裏の顔があった。飽くことなく罪を重ね続け、複雑な関係にある、賀来(がらい)神父のもとへ懺悔にゆく別の姿が! 秘密毒ガス兵器“MW”を軸に、現代の科学万能主義にメスを入れる問題作。(講談社手塚治虫漫画全集版のあらすじ紹介)

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去年「満を持して」映画化したのに、あり得ないほどのずっこけ方をしたのが記憶に新しい手塚治虫の描く究極の「ダークヒーロー活劇」、「MW(ムウ)」のご紹介です。

まず映画ですが、見てないし見る気もないです。世論とは関係なく自分の意見として、結城と賀来が同性愛の関係でないという時点でそれは『MW』ではなく、そんなものを見たくはありません。上戸彩の『鉄腕アトム』といい、どうもこの作者の作品はリボーンされる際にあまりにも非道な扱いを受けすぎてる。


この作品では真の「悪」の結城と、「偽善」の代表の賀来が主人公です。その「悪」の根源となっている「MW(ムウ)」という毒ガスですが、これは1969年の沖縄の米軍基地内でのガス漏洩事件を基にしており、「現代の科学万能主義にメスを入れる」というよりかはその一段階上の、「人間批判」にまでいってるんじゃないかななどと考えています。そのせいかこの作品においての結城の殺し方や、全体を通しての性描写は、中編としてはなかなかにきついものがあります(ちなみに短編においてはこの作品が児童用の絵本に思えるくらいに滅茶苦茶にグロい描写の作品ばかりが殆どです)


しかし「実悪」として描かれている結城ですが、その犯行・殺害の動機の大本は「実悪」とは言い難いです。むしろ「ブラック・ジャック」で正の方向へ向けた人間ドラマを、徹底して負の方向にシフトしたのがこの「MW」だったんだろうと。少なくともただのシリアル・キラーを楽しんで描いた、っていうだけの作品ではありません。まあ氏自身は「ありとあらゆる社会悪―――暴力、裏切り、強姦、獣姦、付和雷同、無為無策………、とりわけ政治悪を最高の悪徳として描いてみたかった」と巻末のあとがきで語ってるし、根幹は至高の「ピカレスクロマン」であることは間違いないんですが。しかし「奇子」といい、本当に人間の汚い部分を描写するのが好きな方だ。すごい。本当に。



最も素晴らしいのはMr.偽善者、「賀来」のキャラクターですね。ふとしたことから結城に負い目を感じており、彼の凶行を毎回毎回食い止めようとしつつ結局はそれに流される。彼が悪としりつつも彼の魅力にあらがえない葛藤が本当にうまく描かれており、心にずかずか刺さりました。




「このぼくをあわれんでくれ。地獄へ何度落ちてもあきたらないぼくだ」
自分が悪だと認識していない悪が極悪ならば、自分が悪だと認識して突っ走る悪は実悪でしょうか。勿論適当です。
全2巻と短く、読み始めたらハラハラドキドキすることうけあいのお勧め漫画です。映画よりも先にこちらをどうぞ。
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只今の一曲:Duvet/bôa(serial experiments rain OPテーマ)
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zita

Author:zita
東京在住。音楽、読書、映画、ドラム、お絵かき、廃墟が好き。趣味は広く広くを目指して。好きなものは深く深くを目指して。