≪ 2017 06   - - - - - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 - - - - -  2017 08 ≫
*admin*entry*file*plugin| 文字サイズ  

ブラッド・ミュージック/グレッグ・ベア(本)

41lnKb0HWbLSL500AA240.jpg

遺伝子工学の天才ウラムは、自分の白血球をもとに全コンピュータ業界が切望する生体素子を完成させた。だが、会社から実験中止を命じられたウラムは、みずから創造した「知性ある創造」を捨て切れずに、研究所から持ち出してしまった…この新種の細胞が、人類の存在そのものをも脅かすとも知らずに!気鋭がハイテクを縦横に駆使して新たなる進化のヴィジョンを壮大に描き、80年代の『幼年期の終わり』と評された傑作SF(ハヤカワ文庫の背表紙あらすじより抜粋)

---------------------------------------------

という、人類と「知性ある細胞=ヌーサイト」とのメタモルフォーゼをテーマに据えたSF小説です。

あらすじや巻末解説文にも出てるし、どこのレビューサイトを見ても必ずアーサー・C・クラークの超絶SFアンセム『幼年期の終わり』と比較されてるのですが、自分は確かに被るところも多々あるのですが、そもそものニュアンスが全く異なっているためそこまでのデジャヴは感じませんでした。とはいえあのアンセムと比較されるほどのパワーを持った作品であることは否定しません。そして以前見た『交響詩篇エウレカセブン』というアニメはこの作品から大いにモチーフを得ているという事に気付きました。「指令クラスター」という単語とか、「スカブ・コーラル」の描写とか、ほぼそのまま受け継がれていますね。あのアニメ、主人公側のキャラクターに感情移入しづらいことと、設定の穴っぷり投げやりっぷりが好きになれなくてあまり印象に残ってないんですが、こういうさまざまなSF作品からモチーフを得ている点は非常に楽しめてました。



この作品は大きく前編、後編に分かれます。

天才ヴァージル・ウラムが「ヌーサイト」を開発し、彼の体の中で「ヌーサイト」が育つ前編(156頁までですね)、そして「ヌーサイト」が暴走し地球的規模で人類を脅かしていく後編。そしてすごいのは章ごとに様々なジャンルの世界観、香りをしっかり感じさせてくれる点でしょうか。前編の終わり間際なんかは薄気味悪いホラーを感じ、ヌーサイトによってすべてが変わってしまった北米大陸をヘリコプターで上空から中継するシーンやスージーがワールド・トレード・センターで一人暮らすシーンなんかは「渚より」にも匹敵する終末観を覚え、そしてラストはまるで「スター・チャイルド」に出会ったかのような壮大さです。


ただそれは一定した世界観が感じづらい…という風に言える危険性もはらんでいます。とにかく前編と後編の雰囲気があまりにも違うため、後編の出だしなんか笑えるかもしれません。どうしてこうなった、という感じに。

自分はこの作品にもっともっと陰惨なグロテスク性と、そこからあふれる終末観を期待してたので、むしろコミカルともいえる「ヌーサイト世界」の描き出し方、そしてキャラクターのポジのエネルギーに少し肩すかしを感じました。とはいえ上記のヘリから北米大陸を眺望するシーンの絶望感は一感の価値ありです。










「ぼくは女の人が好きだ。話したり動いたりするやりかたが大好きだ。魅惑的だね。」
いまは彼は心を開こうとしていた。とくに今夜の後では。
「たいていの男は女の人って、その、神聖だと思ってうはずじゃないかな。ゆきずりの、そんな種類のものじゃないって。でも、ことばにするには美しすぎる。女の人に愛してもらえるってのは---それは信じがたい事なんだ。」(345頁より抜粋)
---------------------------------------------
只今の一曲:Miraparque/Manual
スポンサーサイト


この記事へのコメント

この記事へコメントする















zita

Author:zita
東京在住。音楽、読書、映画、ドラム、お絵かき、廃墟が好き。趣味は広く広くを目指して。好きなものは深く深くを目指して。